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表見代理と無権代理の基本原則を実務視点で簡単に解説!

執筆者の写真: URUR

代理行為は、本人の意思を外部に伝達するための重要な制度です。しかし、実務上は代理人が実際の権限を超えて行為をしたり、そもそも代理権がない者が代理行為を行ったりするケースも少なくありません。こうした場合、【表見代理と無権代理】という二つの概念が登場し、取引の安全性や第三者の信頼保護を巡って重要な問題となります。


働く表見代理人

目次



1. 表見代理の基本

定義と目的

表見代理とは、実際には代理権が存在しない(または代理権の範囲を超えている)にもかかわらず、本人があたかも代理権を与えているかのような外観を第三者に示した場合、第三者の善意無過失を保護するために、本人にその効果が帰属する制度です。この制度は、取引の安全・信頼保護を目的とし、無権代理と全く無効とするのではなく、第三者の信頼を尊重する配慮がなされています。

表見代理が成立する要件

表見代理が成立するためには、一般に以下の三点が必要とされます。

  1. 本人による代理権授与の表示:例えば、委任状の存在や過去の取引実績により、「この者が代理人である」という外観が相手方に示されること。

  2. 代理行為が表示された代理権の範囲内であること:表面的には、代理人が行った法律行為が、その表示された権限の範囲内であれば、第三者は合理的に信じるに足る正当な理由があると判断されます。

  3. 相手方が代理権の不存在または範囲超過を知らずかつ過失もないこと:第三者が善意無過失である場合に限り、本人に効果を帰属させることが認められます。


2. 無権代理の基本

定義と意義

無権代理とは、本人から正当な委任を受けていない者が、あたかも代理人であるかのように法律行為を行う状態を指します。基本的に、無権代理行為は本人に効力を及ぼさない(追認がない限り無効)とされ、これにより第三者が不測の損害を被るリスクを軽減する趣旨があります。

発生する状況

無権代理が生じる主なケースは以下の通りです。

  • 委任関係が存在しない場合:例えば、正式な委任状がないにもかかわらず、従業員が契約を締結するケース。

  • 代理権の範囲を超える場合:例えば、本来与えられた代理権が「賃貸借契約」までに限定されているのに、代理人が不動産の売買契約を締結する場合。

  • 故意又は過失により代理権の有無が誤認された場合:例えば、第三者が長年の取引慣行などにより、あたかも正式な代理権があると合理的に信じた場合。


無権代理の場合、本人が後日追認(あるいは追認拒絶)するかどうかで契約の効力が変わり、追認があれば遡及的に有効となりますが、追認がなければ無効となります。


3. 表見代理と無権代理の比較

共通点

  • 代理権の欠如が問題の根源:両者とも、本来本人から与えられていない代理権に基づく行為である点は共通しています。

  • 本人の追認によって効力が変動する可能性:無権代理の場合、本人が追認すれば有効となり、表見代理の場合は、第三者の信頼保護の観点から本人が否認できない場合があります。

相違点

  • 第三者の保護:表見代理は、第三者が合理的に信頼できる状況を前提としており、たとえ実際の代理権がない場合でも、第三者保護の観点から本人に効果が帰属します。一方、無権代理は原則として本人に効力が及ばず、第三者が追認や催告、取消権を行使することができる点で異なります。

  • 要件と証明責任:表見代理は、第三者が「代理権があると信ずべき正当な理由」があったことを立証する必要があるのに対し、無権代理は、基本的に代理権が存在しなかったという事実に基づく制度であり、本人の追認がなければ効力が発生しません。


無権代理人

4. 実務上の注意点

代理権の確認の重要性

取引の安全性を確保するため、代理人との契約前に本人からの委任状の提示や、代理権の範囲の確認が不可欠です。特に高額取引や不動産取引では、後の紛争を防ぐためにも厳格な確認が求められます。

追認制度と催告権の活用

無権代理のケースでは、第三者は本人に対して追認の意思表示を催告する権利があり、一定期間内に回答が得られなければ追認拒絶とみなされることになります。このプロセスにより、取引の不確定性が解消される仕組みが整っています。

表見代理の判断基準

表見代理が成立するか否かは、相手方が代理権の不存在に気付かなかったことや、その信頼に正当な理由があったかどうかが争点となります。したがって、相手方が善意無過失であるかの判断も重要なポイントとなります。



まとめ

表見代理と無権代理は、一見似た概念でありながら、その趣旨や適用条件、第三者保護の内容において明確な違いがあります。無権代理は、基本的には本人の追認がなければ効力が及ばない制度であり、取引相手は催告権や取消権を有します。一方、表見代理は、本人があたかも代理権を与えたかのような外観を形成し、第三者の信頼保護を目的として、本人に効果が帰属する制度です。


実務においては、代理権の有無やその範囲を十分に確認することが、後のトラブルを避けるために不可欠です。また、万が一無権代理の疑いがある場合には、速やかに本人に追認の意思を確認するなど、慎重な対応が求められます。


以上、【表見代理と無権代理】についての解説でした。代理制度の理解は、法律実務において非常に重要なテーマですので、今後の業務や試験対策の際に、ぜひ参考にしていただければと思います。



【参考文献】

 
 
 

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