裁判は人生の中でも大きな決断を伴う場面の一つです。通常は弁護士を依頼して進めることが多いものの、弁護士に依頼せずに当事者が自ら訴訟を遂行する「本人訴訟」という選択肢も存在します。実際に、費用面の負担や弁護士探し、案件の規模など、さまざまな事情から本人訴訟を検討される方も少なくありません。むしろ弁護士に依頼する・出来る人の方が少ないのが実情です。本人訴訟には独特のメリットデメリットがあり、基礎的な知識やリスクを把握した上で慎重に判断する必要があります。
以下では、本人訴訟とは何か、その特徴や注意点などを分かりやすく解説します。

目次
1. 本人訴訟とは
「本人訴訟」とは、弁護士(代理人)を立てず、原告や被告となる当事者が自分で訴訟活動を行う方法を指します。日本の裁判制度は、必ずしも弁護士を依頼しなくてもよい仕組みになっており、当事者自身が書類を作成し、証拠を提出し、裁判所で主張を展開することが法律上可能です。(刑事事件は別)
自分の権利を自分で守る選択肢
裁判は相手方との争いを法的に解決する場ですが、本人訴訟であれば自らの判断で訴状や準備書面を作成し、証拠を収集するなど、すべて自分で対応します。これは、言い換えれば自分の権利を直接的に守る行為といえます。
2. 本人訴訟のメリット
弁護士費用を節約できる
最大のメリットはなんといってもコスト面です。弁護士に依頼すれば着手金や成功報酬などの費用がかかりますが、本人訴訟ならそれら費用は一切発生しません。
自分の事情を誰よりも熟知している
自らが当事者であるため、事実関係や動機を最もよく理解しています。弁護士に一から説明する手間がかからない分、スピーディな意思決定が可能です。
自由度が高い
訴訟戦略や主張の内容はすべて自分の意思で決定できます。弁護士の助言に左右されず、裁判でどう主張するか、どう証拠を提示するかをコントロールできる点は、ある意味では大きな強みです。
3. 本人訴訟のデメリット・注意点
法的知識の不足
法律や手続きの知識がなければ、書面の作成方法や主張の組み立て方がわからず、裁判所や相手方から的外れと評価されるリスクが高まります。
手続き負担が大きい
訴状や準備書面の作成、期日の調整、裁判所への提出書類の管理、証拠収集など、すべてを自分で行う必要があります。時間的にも精神的にも負担は大きいでしょう。
感情的になりやすい
当事者として直接関わるため、意見が対立する又は加害者が嘘をついたりすると感情的になり、公平な視点を失いやすいのもデメリットの一つです。結果として裁判所とのやり取りがスムーズにいかなくなる可能性もあります。
4. 本人訴訟の流れ
訴状の作成・提出
民事訴訟を提起する場合、まずは訴状という書類を裁判所に提出します。訴状には請求の趣旨(「○○円支払え」など)と請求の原因(主張する事実)を簡潔に示します。
第1回口頭弁論
裁判所から期日が指定され、裁判官の前で訴えの内容や反論の要旨が確認されます。
証拠提出・証人尋問など
書証や証人尋問などを通じて事実関係を明らかにします。本人訴訟では、この手続き全体を自力で遂行しなければなりません。
弁論終結・判決
証拠調べなどが終わり、すべての主張や立証が尽くされると、裁判所は弁論を終結して判決を下します。
5. 本人訴訟を選ぶときのポイント
争点が比較的単純かどうか
複雑な法律解釈や専門知識が必要なケースの場合、本人訴訟の難易度は格段に上がります。請求の根拠がはっきりしていて事実関係がシンプルであれば、比較的スムーズに本人訴訟を進められる可能性があります。
費用対効果
訴訟額やリスクに比して弁護士費用が過大になる場合、本来得られるメリットより費用が上回る恐れがあります。そうした場合に本人訴訟は選択肢として有力です。
自己のスケジュール調整能力
裁判の進行に合わせて書類作成や証拠収集をする時間が必要です。仕事や家庭の事情との両立が可能かどうか、慎重に検討することが大切です。

6. まとめ
本人訴訟は「自分の権利を自分で守る選択肢」として、日本の司法制度において認められています。弁護士費用の負担が不要であり、自分の意思で訴訟戦略を立てられる自由度の高さは魅力的です。しかし一方で、法的知識の習得や書面作成など手続き全般を自分で担う必要があり、負担は決して小さくありません。特に複雑な法的争点があると、専門的な助力なしに勝訴を目指すのは困難なのが現実です。
結局のところ、本人訴訟を行うかどうかは「事案の難易度」「自分の知識やスケジュール」「費用対効果」などを総合的に勘案して決定すべきです。必要に応じて法律相談を活用しつつ、自分の状況に合った方法で権利を守っていくことが大切といえるでしょう。
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