オアスペとは、19世紀末のアメリカにおいてジョン・バロウ・ニューブローによる”自動書記”で啓示されたとされる霊的文書(Oahspe: A New Bible)です。従来の聖典とは一線を画し、宇宙の多層構造、人類の霊的進化、そして新たな視点を提示する点で注目されています。
本記事では、オアスペの成立過程、教義、啓示の手法、そして現代における影響と批判の両面について詳しく解説します。

目次
オアスペの起源と背景
(1)自動書記による啓示

オアスペは、著者ジョン・バロウ・ニューブローが通常の意識状態を離れたトランス状態で受け取った霊的メッセージを、自動書記という手法で記録したとされています。自動書記とは、本人の意志とは無関係に、無意識下の情報が筆やタイプライターを通じて表出する現象です。
(2)19世紀末の精神的背景
19世紀後半は、科学や合理主義が急速に発展する一方で、既存宗教の枠組みに疑問を呈する動きや、未知の霊的世界への探求が活発化した時代でした。こうした時代背景の中、オアスペは従来の宗教概念に対する新たな挑戦として登場し、特にニューエイジやスピリチュアルな探求者の間で支持を受けることとなりました。

オアスペの教義と宇宙観
(1)創造主ジェホヴィと全人格性
オアスペにおいて、至高の創造主「ジェホヴィ(Jehovih)」は、男性性と女性性の両面を併せ持つ全人格的な存在として描かれます。従来の宗教における中間者や救世主を介在させず、個々人が直接この創造主と交わることが可能であるという点が特徴です。これにより、各自が内面的な霊的成長を遂げる道を自らの努力で歩むべきだという教えが強調されます。
(2)多層宇宙の構造
オアスペは、宇宙を単一の物質世界だけではなく、複数の霊的次元が平行して存在するものと解釈します。具体的には、物質界(コーポリアル界)に加え、霊界(アトモスフェリア界)や高次の領域(エーテリア界)などがあり、魂はこれらの領域を順次体験しながら、霊的な昇華を果たしていくと説かれています。
(3)人類の霊的進化と奉仕
オアスペは、人類の歴史を単なる物質的進化ではなく、魂の昇華と霊的成長の連続と捉えています。各個人は、自らの内面を磨き、他者への奉仕や倫理的な生き方(たとえば菜食主義、非暴力、共同生活)を実践することで、より高次の霊的状態へと昇華していくという考えが根底にあります。このプロセスは、来世における魂の配置や全体の進化サイクルとも密接に結びついています。
啓示の伝達方法としての自動書記
(1)自動書記の意義
自動書記は、ニューブロー自身が体験したように、通常の論理的思考や意識の枠を超えて、無意識や霊的領域から直接情報を引き出す手法です。これにより、オアスペは伝統的な宗教文書とは異なり、人間の通常の認識を超えた深淵な啓示内容を含むこととなりました。
(2)自動書記の批評
しかしながら、この方法論は、科学的検証や歴史的裏付けが不十分であるという批判も受けています。多くの研究者は、啓示の正確性や成立過程について疑問を呈しており、そのためオアスペは「新たな啓示書」として一部のスピリチュアルな探求者に支持される一方、学術的評価は分かれる結果となっています。
オアスペの現代的意義と評価
(1)支持層とその影響
現代のニューエイジ運動やスピリチュアルな実践の中で、オアスペは内面的成長や宇宙との調和を目指す指針として再評価されています。特に、日本においては竹内文書などの古代伝承と絡めた解釈がなされ、独自の文化的文脈の中でその教えが受け入れられている側面もあります。
(2)批判と論争
一方で、オアスペの自動書記による啓示という成立過程や、その内容の科学的・歴史的根拠については、懐疑的な見方が根強いです。伝統的な宗教文書や歴史的記録と比べると、あくまで個人的な啓示に基づく文書であるという立場から、その信憑性や実践的有用性に対する批判が続いています。

6. オアスペとは|位置づけと今後
オアスペは、ジョン・バロウ・ニューブローが自動書記によって受け取った啓示を元に編纂された文書であり、宇宙の多層構造、人類の霊的進化、そして創造主との直接対話を説く点で、伝統的な聖典とは大きく異なる独自の世界観を示しています。
支持者にとっては、オアスペは精神的混乱や物質主義に対抗する新たな指針であり、内面的成長や宇宙の真理を探るための実践的なツールとされています。一方、成立過程や内容の真偽に対する批判は今後も続くと考えられ、学術的な検証や対話の対象として残り続けるでしょう。
現代社会が抱える精神的課題や、個々の内面の探求において、オアスペは一つの「実験場」として、また新たな霊的啓示の可能性を示すものとして注目され続けることが期待されます。
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