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民法第二節「意思表示」分かりやすくを徹底解説!

執筆者の写真: RentaRenta

本記事は、民法第二節「意思表示」について、主要規定とその趣旨を具体例や実務的な考えを交えながら、分かりやすく解説します。


意思表示をする握手

目次



1.意思表示の基本的意義

意思表示とは、ある法律行為(契約など)を成立させるために、当事者が自らの意思を外部に伝える行為です。民法はこの意思表示が必ずしも表面的な言葉と、表意者の真意(内心)とが一致しない場合(冗談など)や、錯誤、詐欺、強迫などの事情により問題が生じたときの取扱いを定めています。


家を購入する夫婦

2.各規定の解説

(1)心裡留保(第九十三条)

規定の趣旨:表意者が実際の内心(真意)とは異なる意思表示をした場合でも、通常はその表現の効力は認められます。

例:たとえば、交渉上「冗談半分」で意思表示していたとしても、相手方がそれを普通の意思表示と信じたならば、原則としてその意思表示は有効です。

例外:もし相手方が「これは真意ではない(冗談だな)」と知っていた、または知ることができた場合には、その意思表示は無効となります。

第三者保護:なお、この無効の効果は、善意でかつ過失がない第三者には対抗できません。


(2)虚偽表示(第九十四条)

規定の趣旨:当事者同士が互いに通じて、実際には存在しない意思を表示する(つまり、偽りの意思表示をする)場合、その法律行為は無効となります。

例:売買契約において、双方が実は本当の意思ではなく、ただ形式上だけ成立させた場合などが該当します。

第三者保護:こちらも、善意でかつ過失がない第三者に対しては、無効の効果は及ばないとされています。


(3)錯誤(第九十五条)

規定の趣旨:意思表示が、重要な事実や法律行為の目的に関して誤った認識に基づいている場合、その錯誤が取引上の社会通念から見て重要であれば、意思表示は取り消すことができます。

具体的な錯誤の種類:

意思を欠く錯誤: 表意者が、本来の意思とは異なる意思表示をしてしまった場合。

認識の錯誤: 法律行為の基礎となる事実について誤った認識をしていた場合。

取消しの要件:ただし、錯誤に基づく取消しは、その錯誤が当該法律行為の基礎として明示されていた場合に限られ、また、表意者に重大な過失があった場合は、一定の場合(例えば、相手方がその過失を知っていた場合など)を除いて取消しは認められません。

第三者保護:キャンセルの効果は、善意無過失の第三者に対しては及ばないとされています。


(4)詐欺又は強迫(第九十六条)

規定の趣旨:詐欺や強迫により意思表示が行われた場合、その表示は取り消すことができます。

例:詐欺により不当な契約を結ばされた場合や、脅迫によって不利な条件で契約を締結させられた場合が該当します。

第三者保護:詐欺や強迫による取消しも、善意かつ過失のない第三者に対しては、その取消しの効果は及びません。


(5)意思表示の効力発生時期等(第九十七条)

基本原則:意思表示は、その通知が相手方に到達した時点で効力を生じます。

通知妨害の場合:相手方が正当な理由なく通知の到達を妨げた場合は、通常到達すべき時点で到達したものとみなされます。

表意者の死亡等:表意者が通知発出後に死亡や能力喪失があっても、すでに通知が行われた時点の意思表示の効力には影響しません。


(6)公示による意思表示(第九十八条)

規定の趣旨:表意者が相手方の所在を知らない場合、通常の通知ができないときは、裁判所の掲示場や官報などを利用した公示の方法により意思表示をすることができます。

効力の発生:公示による意思表示は、最後に官報に掲載した日または掲示開始の日から2週間経過した時点で、相手方に到達したとみなされます。ただし、表意者に過失があった場合は到達の効力を認めない場合もあります。

費用と手続き:公示に関する費用は予納が必要となり、簡易裁判所の管轄に属するなど、厳格な手続きが定められています。


(7)意思表示の受領能力(第九十八条の二)

規定の趣旨:意思表示を受ける側(相手方)が、その時点で意思能力を欠いていたり、未成年者や成年被後見人であった場合、その意思表示は原則として相手方に対抗できません。

例外:ただし、相手方の法定代理人や、後に意思能力が回復した場合は、例外的にその意思表示が効力を有することになります。



3.総括と実務視点

民法の「意思表示」規定は、表面的な意思表示と内心の真意との乖離、または誤認や不正な圧力のもとでの表示など、現実の取引における多様な問題を調整するために設けられています。

柔軟性と裁量:これらの規定は非常に柔軟で、具体的事案ごとに裁判所が当事者の事情、相手方の認識状況、善意第三者の保護などを考慮して判断するため、判例の積み重ねにより一定の判断基準が確立されています。

実務への影響:たとえば、詐欺や強迫による意思表示の取消しは、取引の公正性を確保するための重要な救済手段として機能しており、実際の判例では、被害者保護のために厳格な基準が採用される一方、第三者保護のために取消しの効果が限定されるケースが認められています。


民法第二節「意思表示」は、表意者の内心と外面的な表現の乖離があった場合(心裡留保)、当事者間での虚偽表示の問題、重大な錯誤や詐欺、強迫の下でなされた表示、そして通知の到達時期や、相手方の受領能力など、さまざまな状況下で意思表示の効力や取消しがどのように取り扱われるかを詳細に定めています。


これらの規定は、契約自由の原則と社会全体の安全・公正な取引の維持とのバランスを図るために存在し、判例の積み重ねによってその適用基準が現実の取引や社会状況に即して具体化されています。


このように、意思表示に関する各規定は、当事者間の真意や誤認、不正行為に対する救済措置として、また取引の安定性を確保するために重要な役割を果たしているのです。



追記



意思表示は、契約などの法律行為の根幹をなす概念であり、その効果や取消しのルールは、日常生活のあらゆる法的取引に深く関与しています。以下、その関連性と具体的な適用例について説明します。


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4. 一般人と意思表示の関係

日常生活への影響:家や車の購入、賃貸契約、ローン契約、保険加入など、ほとんどの取引は意思表示に基づいて成立します。たとえば、売主に対して「この家を買います」というあなたの意思表示と、買主側の「売ります」という意思表示が合致することで契約が成立し、その内容は法律的に保護されます。


このように、意思表示のルールは、普段何気なく行っている取引においても、あなたの意思が正しく伝わり、取引が安全かつ公平に進むための基盤となっています。

多くの場合、私たちは「意思表示」そのものの法理論や判例の詳細を意識することはありません。しかし、契約書の作成や取引条件の交渉において、正確な意思伝達がなされていなければ、後のトラブルや契約取消しの原因となる可能性があるため、実務上は非常に重要なルールです。


5. 意思表示の対象

意思表示という概念は、契約の成立以外にもさまざまな法律行為に適用されます。具体的には、

一方的な法律行為:遺言は、遺言者が自らの意思を表明して財産の分配を指定するものであり、これは意思表示の一形態です。また、贈与の意思表示(たとえば、「これをあなたに贈ります」といった表明)も、相手がそれを受け入れるかどうかにかかわらず、贈与の効果を生じさせるための重要な行為です。

承諾・撤回・取消しなど:契約のオファーに対する承諾や、既に行った意思表示の撤回取消しも、いずれも意思表示の一種です。たとえば、ある契約の締結前に「この条件で契約を締結します」というオファーをした後、状況の変化を理由にそのオファーを撤回する場合、その撤回も意思表示にあたります。

公示による意思表示:相手方が不明な場合に、官報や裁判所の掲示板に掲載して意思表示を行う方法もあり、これもまた意思表示の重要な一形態です。


「公示による意思表示」という制度は、通常の意思表示(たとえば、契約の申し込みなど)において、相手方の住所や所在が不明で、直接通知することができない場合に用いられる手続きです。以下、その特徴や利用シチュエーション、誰でも利用可能かどうかについて解説します。



6. 公示による意思表示の詳細

基本的概念:通常、意思表示は表意者が直接相手に伝えることで効力を生じます。しかし、相手方の所在が不明な場合、直接通知することができないため、法律はその代替手段として「公示による意思表示」を認めています。

具体的な方法:民事訴訟法などに従い、裁判所の掲示場に掲示するか、官報に少なくとも一回掲載するなどの公示手続きが定められており、これにより、一定期間(通常は最後の公告日から2週間)が経過した日、到達したとみなされます。

一般人も利用可能?:この制度は特定の業者や法人に限定されるものではなく、当然ながら一般の個人でも利用できるものです。たとえば、ある契約の相手方の連絡先が不明になってしまい、契約の取消しや解除を通知しなければならない場合などに、公示手続きが検討されます。

利用の条件:ただし、表意者自身に相手方の所在を把握する努力義務があり、過失がある場合(たとえば、表意者自身が相手の所在を把握できたにもかかわらず、故意に公示を選んだ場合)には、その効力が否定されることもあります。また、手続き上の費用を予納するなど、所定の手続きを踏む必要があります。


*公示による意思表示が用いられるシチュエーション

A. 相手方の所在が不明な場合

例えば、相手方が連絡先を知らせずに消息を絶ってしまった場合、または相手方が海外にいるなどして直接通知が困難な状況です。

B. 契約や法律行為の取消し・解除の場合

何らかの理由で契約の解除や取消しを行う必要があるが、相手方に直接通知できない場合に、公示を通じて意思表示を行うことが認められます。

C. その他、特殊な通知が必要なケース

相手方との連絡が断絶している場合や、緊急性が求められる法的手続きにおいても、公示の手段が利用されることがあります。


制度の目的:公示による意思表示は、相手方の所在が把握できない場合でも、法律行為を完結させるための安全弁として存在します。これにより、契約やその他の法律行為が不必要に停滞することを防ぎ、取引の安全性や社会的秩序の維持に寄与します。

利用者:この制度は特定の業者だけでなく、一般の個人も利用できるもので、たとえば債権の履行通知、契約解除の意思表示、その他重要な法律行為の通知が必要な場合に適用されます。ただし、利用には所定の手続き(裁判所への申請、官報への掲載、予納費用の支払いなど)が必要です。



 
 
 

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