以下の記事は、国際刑事裁判所(ICC)判事として活躍し、近年ではロシア当局による“指名手配”という逆風を受けながらも、2024年3月には日本人初としてICCの裁判所長に就任。正義を追求し職務を全うする赤根智子(あかねともこ)さんについてまとめたものです。彼女の来歴や功績、そして現在置かれている状況を概説し、日本人として国際司法の最前線で戦う姿を紹介します。

目次
1. 赤根智子さんの略歴
氏名:赤根 智子(あかね ともこ)
生年月日:1956年(昭和31年)6月28日
出身地:愛知県名古屋市
現職:国際刑事裁判所(ICC)裁判官
2024年3月:ICC裁判所長に就任(日本人初)
赤根さんは日本の検察官・裁判官として国内外で要職を歴任してきた人物です。国内では法務総合研究所長や検事正、最高検検事などを務めた後、日本人として3人目のICC裁判官に選出。さらに、2024年3月にはICC所長に就任し日本人初の快挙を成しました。
2. 国内での主なキャリア
検察官としての歩み
1980年に東京大学法学部を卒業し、司法修習(34期)を経て1982年に検事任官。横浜・名古屋・仙台・東京など、複数の地方検察庁で勤務しながら刑事司法の現場を経験しました。その後、アメリカへの留学を経て、再び国内に復帰。さまざまな事件の公判を担当したほか、札幌地方検察庁公判部長や、函館地方検察庁検事正などを歴任します。
法務総合研究所・国連アジア極東犯罪防止研修所
法務省の研究教育機関である法務総合研究所において国際協力部長や所長を務め、研修や国際協力の分野でもリーダーシップを発揮しました。また、**国連アジア極東犯罪防止研修所(UNAFEI)**の所長・次長なども兼任し、海外法曹関係者の研修や国際犯罪防止に関わる活動など、日本の法整備支援を国際社会へ広げる役割を担いました。
大学教授としての教育面への貢献
名古屋大学大学院法学研究科や中京大学大学院法務研究科の教授も兼務し、法律実務の教育・研究に携わっています。国内外で培った豊富な経験を後進育成に活かし、日本の法曹界に幅広い知見を還元してきました。

3. 国際刑事裁判所(ICC)裁判官として
ICC判事選挙への当選と就任
2017年12月、赤根さんは国際刑事裁判所裁判官選挙で当選。翌2018年3月に正式にICC裁判官として就任しました。ICCでは、ジェノサイドや戦争犯罪など重大な国際犯罪を審理する常設裁判所として、国際社会の法の支配を担っています。
ICC所長への就任
ICCの裁判官には9年の任期があり、赤根さんは就任以降、予審手続などを担当。さらに、2024年3月にはICC所長に就任、日本人として初のICCトップになりました。

4. ロシアによる“指名手配”の背景
ウクライナ情勢とICC
2022年以降のウクライナ侵攻をめぐり、ICCは戦争犯罪の可能性があるとしてロシア関連の捜査を開始。2023年3月には、ウラジーミル・プーチン大統領らに対する逮捕状を発付しました。
ロシア政府の報復措置
逮捕状発付を不当とするロシア当局は、ICCのカリム・カーン主任検察官や赤根さんを含む3名の裁判官に対して捜査開始を宣言。2023年7月27日には、赤根さんをロシア国内法に基づき「刑法違反容疑」で指名手配したと発表しています。これは事実上、ICC関係者に対する政治的・外交的圧力とされ、国際社会から厳しい批判を受けています。
5. 赤根さんが示す意義と展望
国際法秩序への貢献:国内で培った検察官としての豊富な経験を、国際社会の重大犯罪を裁く場に活かしている点は、日本の法曹が持つ強みと可能性を体現しています。
法整備支援・国際協力の推進:UNAFEIなどでの研修を通じ、アジアをはじめとした国々の司法制度や犯罪防止の整備にも多大な貢献を果たしてきたことは、赤根さんの国際的視野と積極性をよく示しています。
ロシア指名手配への毅然とした姿勢:異例の事態に直面しながらも、公正な国際法廷として職務を全うする姿は「法の支配」という理念を守り抜く意志の表れです。
日本の法曹への示唆:赤根さんは日本人として3人目のICC判事であり、2024年にICC所長に就任するという前例をつくりました。こうしたグローバルキャリアは、日本の法曹にとって新たな活躍の場を示す好例ともいえます。
6. まとめ
赤根智子さんは、日本国内での長年にわたる検察官・司法行政の経験を活かしながら、国際刑事裁判所という舞台で国際正義の実現に尽力してきました。ロシアからの指名手配を受けるという逆風の中でも、その姿勢を崩さずに重要な審理を担っています。ICC所長になった今では、世界の注目をさらに集める立場になりました。彼女の軌跡は、日本法曹界が国際社会で果たし得る役割の大きさを示し、また「法の支配」を軸にした平和の構築がいかに重要かを改めて問いかけるものとなっています。
人間到る処青山あり
参考資料
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