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​次世代ブログ

【財務省解体方法】財務省を解体するには?財務省設置法から探る

執筆者の写真: RentaRenta

はじめに〜

本稿は、昨今SNS(XやYoutube)を中心に話題となっている『財務省解体デモ』に関連し、「財務省を解体するには?」「財務省解体方法」などと検索する人々が増加する背景に伴い、その答えを現行法(財務省設置法)から探り考察したものである。なお先述しておくが、これらは法的アドバイスを提供するものではなく、あくまでも情報提供であることを念頭に置いてほしい。


豪遊する財務省職員

目次


財務省本庁舎(東京・霞が関)
財務省本庁舎(東京・霞が関)

  1. 財務省設置法とは何か?

財務省設置法(平成11年法律第95号)は、日本の財政を担当する中央官庁である財務省の設置根拠となる法律です​。1999年に制定され、2001年の中央省庁再編で施行されたこの法律により、大蔵省は名称を改め財務省となりました​。


この法律には財務省の任務(目的)や所掌事務(担当業務)、内部組織などが定められており、財務省の権限や役割を法的に規定しています。例えば、財務省設置法第3条で掲げられた財務省の任務には、「健全な財政の確保」「適正かつ公平な課税の実現」「税関業務の適正な運営」「国庫の適正な管理」「通貨に対する信頼の維持」「外国為替の安定の確保」といった国家財政に関わる重要事項が含まれています​。要するに、国の財布を健全に保ち、公平に税を集め、お金の流れと信用を守ることが財務省の使命として法律に明記されているのです。次では、より詳しく財務省の役割を見ていきましょう。


  1. 財務省の役割と組織(法律上の定め)

財務省設置法は、財務省が担う具体的な業務(所掌事務)を細かく列挙しています。財務省の主な権限・役割を整理すると、以下のような分野に大別できます。

①国家予算の編成と財政管理

国の予算決算の作成、予備費の管理、各省庁の予算執行の監督など、政府の収支に関する制度企画と執行管理を行います​。各省庁からの概算要求を受けて政府全体の予算案を作り、国会に提出するプロセスを統括するのが財務省の役割です。

②税制の企画・税務行政

国の租税制度を立案し、税金を適正かつ公平に徴収する役割があります。具体的には、所得税・法人税など国内税の課税・徴収業務を行う国税庁を所管し(財務省の外局)、税理士制度の管理や酒税の施行なども担当します​。また関税や輸入消費税など税関業務(関税の課税や通関手続の監督)も重要な任務で、これら税収を適切に集める歳入管理は財務省の中核的機能の一つとなっています。

③国庫・国有財産の管理

国が保有する金銭や財産の適正な管理も財務省の職掌です。国庫金(国の資金)の出納・運用管理や、国有財産(国有地や国有建物など)の統括管理・処分を所掌します​。各省庁の歳入徴収事務の統括や国の債権債務の管理も行い、国家の資産を一元的に管理する役割を担っています。

④通貨制度・金融業務と為替

日本の通貨制度(貨幣や日本銀行券の発行管理等)や国債の発行管理、財政投融資計画の策定など、政府の財政金融に関わる分野も所管します​。また為替相場の安定に向けた外国為替資金の管理や国際通貨制度への対応といった、通貨・金融面での政策も財務省の重要な役割です​。例えば、円の信認維持や為替介入(必要に応じた市場介入)についても財務省(財務大臣)が権限を持っています。

⑤国際金融・経済協力

財務省は国際的な舞台でも活動しており、IMF(国際通貨基金)や世界銀行などの国際金融機関との連絡調整、G7・G20財務相会合への参加、他国との二国間融資や債務交渉など、国際金融に関する業務も担っています。通貨交換(スワップ)協定の締結や開発途上国への財政支援など、日本の財政外交の司令塔としての役割も。


以上のように財務省設置法には、国家の財政運営全般に関わる幅広い職務が規定されています。法律上、財務省の長は財務大臣であり(第2条第2項)​、内部組織として本省には特別な職(例えば国際金融を統括する財務官)の設置(第5条)​や、財政制度等審議会・関税・外国為替等審議会といった諮問機関(第6~8条)を置くことも定められています​。また地方支分部局として全国に財務局(地方財務局)および税関を配置し(第12~17条)​、地域における財政業務や税関業務を遂行します。さらに外局である国税庁の設置根拠も財務省設置法に定められており(第18条~第20条)、国税庁は税の徴収執行部門として独自の任務と事務を負っています。これら組織規定により、財務省は中央(本省)から地方出先機関(財務局・税関)まで一体となった組織体系を持つことに至ります。


  1. 財務省を廃止・改編する規定はあるのか?

結論から言えば、財務省設置法自体に財務省を廃止するための規定はありません。 財務省設置法は財務省を「設置する」ための法律であり、その存続を前提としています。したがって、この法律の中に「財務省を解体する場合には…」といった条項は設けられていません。また関連する国家行政組織法において、各省庁の設置や廃止は国会が制定する法律によって行うと明記されており、「行政機関の設置及び廃止は、別に法律の定めるところによる。(国家行政組織法第3条第2項)」と規定されています。これが各省庁設置法の基本原則であり、つまりは、内閣の裁量や省令・政令だけで省庁(財務省)そのものを廃止(解体)することはできず、必ず国会で法律を改正・制定する必要があるということです。


過去の例を見ても、中央省庁の統廃合はすべて法改正によって行われています。例えば2001年の中央省庁再編では、大蔵省設置法が廃止され、新たに財務省設置法が施行される形で再編が実施されました​。この時は、大蔵省から金融監督機能を分離して金融庁を発足させるなど組織改編が行われましたが、それも含め一連の改革関連法(中央省庁等改革関係法)を国会で可決することで実現しています​。このように省庁の解体・再編は法律によって初めて可能になるため、現行法に基づいてすぐさま財務省を解体できるような手続きが用意されているわけではありません。


  1. 現行法では財務省を解体できない

上記の通り、財務省を廃止・解体するには法律改正が絶対不可欠であり、現行法の枠内で行政手続きだけで解体する方法は存在しません。具体的には、内閣が財務省設置法等の改正案あるいは廃止法案を国会に提出し、衆議院・参議院で可決・成立させる必要があります。法律改正なしに内閣の判断だけで省を廃止すれば、法律違反となってしまうからです。この点については法曹関係者も明確に指摘するところで、財務省の解体を実現するには財務省設置法など関連法規の改正によって財務省の権限や役割を見直す以外に道はないとされています​。裏を返せば、法律さえ改正すれば財務省の組織を再編すること自体は可能ですが、現行法にそのような柔軟な仕組み(自動的に組織を廃止できる規定)は用意されていないのです。


では、政治的決定や行政上の工夫で財務省を実質的に解体することはできないのでしょうか?例えば財務省の持つ機能を他の機関に分散させるというアイデアがあります。実際に議論されることがあるのは、国税庁を財務省から切り離して独立した機関に昇格させる案や、予算編成権を内閣の別組織(かつて議論された国家戦略局など)に移管するといった案などがあります。こうした組織の分離・再編によって財務省の権限を削ぎ、事実上「解体」するというシナリオですが、これらも最終的には法律を制定・改正して実行する必要があり、行政組織の大枠を定める国家行政組織法や各省設置法の改正なくして、権限移管や新組織の設置は厳しいです。


まとめると、現行法のままで財務省を解体できる抜け道はなく、解体を行うためには国会による法律改正という正式なプロセスを踏む必要があります​。極端な例ですが、仮に財務省の業務を他省庁や新設機関にすべて移管し終えて「空っぽ」にしたとしても、法律上で財務省を廃止しない限り財務省という組織は存続し続けます。それほどまでに、省庁の存廃は法治制度の根幹に関わる問題であり、場当たり的に解体できないよう厳格に枠組みが定められているのです。


  1. 財務省「解体論」に対する見解と今後の課題

近年、「財務省解体」を求める声が国民の間で高まっています。2025年2月には霞が関の財務省前で消費税廃止や財務省の解体を訴えるデモが行われ、SNS上で大きな注目を集めた。このデモの背景には、財務省が増税や緊縮財政を推し進めているという国民の不満があります。財務省は各省の予算要求に目を光らせ歳出を抑制する立場にあるため、「歳出削減至上主義」への批判や、財務省官僚と政治家の関係に疑念を抱く世論が存在するのは事実です。こうした中で登場した財務省解体論は、「強大すぎる財務省の力を削ぐべきだ」という政治的スローガンとも言えます。


しかし、法律的・制度的な観点からは、財務省を解体すればすべての問題が解決するわけではなく、予算の最終的な決定権は国会(立法府)にあります​。財務省は政府案を作成する役割に過ぎず、予算案の成立には国会審議と議決が必要です。極論、財務省を無くしても国会が予算編成権を持つ構図自体は変わりません。財務省解体論に賛同する人々も、究極的には政治家(国会議員)が財務省に依存せず主体的に財政運営に責任を持つことが重要であり、それこそが財務省の影響力を相対的に低下させる道だと考えているようです​。


元明石市長の泉房穂氏は財務省解体を主張する投稿を行った後、「悪いのは財務省そのものではなく財務省の言いなりになっている政治家だ」とも訂正している。この発言からも分かるように、最終的には政治側の改革・覚悟が問われている面も大きいのが現実です。



財務省解体は「法律を通じた大規模な制度改革」の問題です。解体するにしても、その後に国の財政機能をどう再構築するかという設計が不可欠であり、場当たり的に省庁を無くすことは現実的ではありません。財務省の代わりに誰が予算を編成し、誰が税を集め、国庫を管理するのかといった代替案を用意した上で、法改正を進める必要があります。現在取り沙汰されている案(国税庁の分離や予算権限の分散など)も含め、政府・与野党間で合意形成し法律に落とし込む作業には相当な時間と調整が求められるでしょう。

逆に言えば、国会で必要な法律が成立しさえすれば財務省の解体・再編自体は法的には可能であり、現行法が絶対に変更不可能というわけではありません。今後もし本格的に財務省改革が議論される場合は、単なる「解体」ではなく財政ガバナンスの在り方**を包括的に見直しつつ、憲法の枠内で民主的手続きを経て改革を進めていくことが肝要でしょう。


  1. 財務省解体方法|まとめ

財務省設置法の詳細を見ながら、現行法で財務省を解体できるのか検証してきました。ポイントを整理すると、

  • 財務省設置法は財務省の権限・任務・組織を定めた法律であり、財務省の存在そのものを支える根幹法です​。財政・税制・国庫・通貨など国家財政に関わる広範な事務が法律で財務省の所掌として規定されています​。

  • 財務省設置法や国家行政組織法には、財務省を廃止・解体するための規定は存在せず、むしろ省の新設・廃止は「法律による」と定められています​。したがって、法律改正なしに行政的措置だけで財務省を解体することはできません。財務省解体を実現するには、国会で財務省設置法の改正または廃止法の成立が不可欠。

  • 現行法に基づく明確な解体手続がないことは、裏を返せばそれだけ財務省の存続が法制度上盤石であることを示しています。解体には政治的決断と法改正が必要であり、現状では「解体論」は政治・政策上の主張や将来構想の域を出ません。実際の改革となれば、国税庁の独立や予算編成機能の分散など段階的な再編案が議論されていますが​、いずれも最終的には法律整備を要するものです。

  • 財務省解体デモに見られるように世論の一部には強い不満がありますが​、専門家は財政民主主義(国会の関与)や政治家の役割の重要性を指摘しています​。財務省という組織をなくしても、財政運営の仕組みそのものを変革しなければ問題は解決しないため、本質的には政治・制度改革の課題だと言えます。


以上より、「現行法で財務省を解体する方法」は実質的に存在せず、財務省を解体・再編したければ法改正という正攻法を取るしかないというのが結論です。財務省設置法をはじめ関連法を国会で改正することにより初めて財務省の解体は可能となりますが、そのハードルは高く、また解体後の財政運営のビジョンを描くことが前提です。財務省設置法の徹底分析から浮かび上がるのは、財務省を巡る問題は単なる一省庁の存廃でなく、日本の財政システムとガバナンス全体に関わる大きなテーマであるということです。


今後の議論は感情的な「解体」論にとどまらず、法律に根ざした冷静な制度設計の検討へと深化していくことが期待されます。


 

参考資料・出典

財務省設置法・国家行政組織法(e-Gov法令検索)​

 
 
 

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