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【完全解説】民法第三節「行為能力」とは?成年・未成年・制限行為能力まとめ

執筆者の写真: RentaRenta

更新日:2月7日

本記事では、民法第三節「行為能力」に関する各規定の趣旨と仕組みについて、論理的かつ分かりやすく解説します。


民法第三節「行為能力

目次


1.基本的枠組み

民法第三節は、個人が法律行為(契約の締結、財産の処分、訴訟の提起など)を行う際の「行為能力」、すなわち自らの意思で有効な法律行為を行えるかどうかの判断基準や、能力が制限される場合の保護措置を定めています。対象となるのは、成年者未成年者、そして精神上の障害等により判断能力が制限される者です。



2.成年者(第4条)

第4条「成年」

「年齢十八歳をもって、成年とする」と定め、18歳に達した時点で原則として完全な行為能力を有することになります。

【要点】 18歳以降は、法定代理人の同意なく自ら意思表示を行い、契約等の法律行為が原則として有効となる。


3.未成年者の法律行為(第5条・第6条)

(1)一般の未成年者の行為(第5条)

第5条第1項

原則として、未成年者が法律行為をする際は、法定代理人(通常は親など)の同意が必要です。ただし、単に権利を得る、または義務を免れるだけの行為については同意不要とされています。

第5条第2項

この原則に反して行われた法律行為は、後から取消しができる(つまり、取り消すことが可能)と規定されています。

第5条第3項

なお、法定代理人が特定の目的をもって処分を許した財産については、その目的の範囲内で未成年者は自ら判断して処分できるようになっており、柔軟性が認められています。


(2)未成年者の営業の許可(第6条)

第6条

もし未成年者が、一種または数種の営業(事業活動)について法的な許可を受けた場合、その営業に関しては成年者と同じ完全な行為能力が認められます。ただし、実際にその営業に耐えうる能力がない場合は、法定代理人が家庭裁判所の規定に従い、その許可を取り消すか制限することができるとされています。

【まとめ】

未成年者は原則として行為能力が制限され、法定代理人の同意が必要ですが、日常生活における単純な権利取得や、特定の事業活動に関しては例外的に自由な判断が認められる仕組みになっています。


4.精神上の障害による行為能力の制限措置

判断能力の著しい低下や不十分な場合、本人の利益保護のため、家庭裁判所による介入措置がとられます。ここでは、後見(成年後見制度)保佐補助の三つの制度が規定されています。


(1)【後見制度】(第7条~第10条)

第7条

「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」について、家庭裁判所は本人や一定の利害関係者の請求により、後見開始の審判をすることができます。

第8条

審判により、対象者は成年被後見人とされ、成年後見人が付されます。

第9条

成年被後見人が行った法律行為は、原則として取消し可能ですが、日常生活に必要な行為(例:日用品の購入など)は例外となり、取り消すことができません。

第10条

後見開始の原因が消滅した場合、一定の請求に基づき家庭裁判所は審判を取消し、保護措置を解除しなければならないとされています。

【意義】

重度の判断能力障害にある成人を対象とし、その財産や権利を保護するとともに、日常生活に支障がないよう一定の自由も認めるバランスを図っています。


(2)【保佐制度】(第11条~第14条)

第11条

「精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分な者」について、後見ほどの厳格な措置は必要ないと判断される場合に、家庭裁判所が保佐開始の審判を行います。ただし、すでに後見の原因がある者はこの制度の適用外です。

第12条

審判により、対象者は被保佐人とされ、保佐人が付されます。

第13条

被保佐人が行う一定の重要な法律行為(たとえば、多額の借入れ、不動産の処分、訴訟、贈与や相続に関する行為など)については、保佐人の同意が必要とされます。

また、保佐人が不当な拒否をした場合には、家庭裁判所が代わって許可を与える措置も用意されています。

第14条

保佐開始の原因が消滅したとき、または必要性がなくなったときには、家庭裁判所は審判を取消する義務があります。

【意義】

保佐制度は、後見よりも軽度の判断能力の不足に対応するため、被保佐人の重要な取引を保護しながら、必要な範囲に限定してその自由を制限する仕組みです。


(3)【補助制度】(第15条~第18条)

第15条

「精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である」者について、保佐や後見ほどの介入は不要と判断される場合に、家庭裁判所が補助開始の審判を行います。ただし、後見や保佐の原因がある者は対象外です。また、本人以外の請求で補助を開始する場合には、本人の同意が必要です。

第16条

補助開始の審判により、対象者は被補助人となり、補助人が付されます。

第17条

補助人の同意が必要な法律行為について、具体的な範囲(保佐制度の一部に類似する重要な行為)が定められ、同意がなければ行為は後から取消し得るとされています。また、補助人が不当に同意を与えない場合には、家庭裁判所が代替措置をとることが可能です。

第18条

補助開始の原因が消滅した場合、または必要性がなくなった場合には、家庭裁判所は審判を取消し、補助制度を解除します。

【意義】

補助制度は、軽度の判断能力不足に対して、被補助人の意思をできるだけ尊重しつつ、必要な範囲で保護を行うための制度です。



5.相互関係とその他の規定

(1)【審判相互の関係】(第19条)

• 各保護措置(後見、保佐、補助)は基本的に重複して適用されるべきではないとされています。例えば、既に保佐や補助の措置がとられている場合に後見審判がなされると、その保護措置は取消される仕組みになっています。

【意義】 重複による混乱を避け、最も適切な保護体制を確保するための調整規定です。


(2)【制限行為能力者の相手方の催告権】(第20条)

• 制限行為能力者(未成年者、成年被後見人、被保佐人、被補助人など)と取引した相手方は、後に当該者が完全な行為能力者となった場合、一定期間内(原則1ヶ月)に、その行為の追認(または取消しの意思表示)を求める権利があります。期間内に反応がなければ、行為は追認されたものとみなされるため、取引の安定性が確保されます。


(3)【制限行為能力者の詐術】(第21条)

• 制限行為能力者が、あたかも完全な行為能力者であるかのように詐術(ごまかし)を用いた場合、その法律行為は取消すことができなくなります。

【意義】 自らの能力不足を隠して相手方に不利益を及ぼすことを防ぎ、取引の信頼性を保護するための規定です。


6.総括

民法第三節は、以下のような趣旨で構成されています。


成年者は18歳から完全な行為能力を有し、自由に法律行為を行えます。

未成年者は原則として法定代理人の同意が必要ですが、日常生活に密着した行為や、特定の事業活動に関しては例外規定があり、柔軟な運用がなされています。

精神上の障害等による能力制限に対しては、保護の必要性に応じて後見(全面的な保護)保佐(中程度の制限)、**補助(軽度の制限)**という三段階の制度が設けられ、対象者の権利と利益が守られるようになっています。

• また、これらの保護措置の解除や相手方の権利行使(追認の催告権)についても明確に定め、状況の変化に応じた柔軟な対応が可能な仕組みとなっています。


このように、民法第三節は、行為能力の有無や制限により、当事者間の取引の安全性と、弱い立場にある者の利益保護とのバランスを図るための、非常に体系的なルール群であると言えます。


木槌

追記



民法において、精神上の障害や事理の弁識能力の欠如については、あくまで「全体的な状況判断」に基づいて審判が下されるため、具体的な数値や一律の基準が定められているわけではありません。以下、その趣旨と実務上の考え方を整理します。


①審判の判断基準について

(1)「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況」

【後見開始の審判(第7条)】

この規定は、本人が日常生活や重要な法律行為において、自己の行為の意味やその結果について十分な理解ができず、常にその能力が著しく欠如している場合に適用されます。

実務的には、精神科医などの専門家の診断、本人の日常生活の実態、財産管理の状況、さらには家族や周囲の証言など、多角的な証拠に基づいて、裁判所が「常にその能力を欠いている」と判断する必要があります。したがって、たとえば一過性の混乱や一時的な判断能力の低下だけではなく、持続的かつ深刻な障害が認められることが求められます。


(2)「事理を弁識する能力が著しく不十分である」

【保佐(第11条)・補助(第15条)の審判】

こちらは、後見ほどの厳格な状態まではいかないが、一定の法律行為(特に重要な取引)において判断能力の不足が懸念される場合を対象としています。

実際には、被保佐人の場合は、たとえば不動産の処分や高額な借入れなど、リスクの大きい行為については保佐人の同意が必要となり、補助の場合も同様に一定の重要行為で補助人の関与が求められます。 どの程度「著しく不十分」であるかは、医療的診断や具体的な行為のリスク評価を踏まえた、個別具体的な事情の検討によって決まります。


いずれの場合も、裁判所は専門家の意見やその他の証拠を総合して、その者が自らの意思で十分に法律行為の意味・結果を把握できるかどうかを判断します。すなわち、精神障害の「程度」や「持続性」、さらには行為そのものの性質が審判の判断材料となるため、一律の「〇〇%以上の能力低下」というような定量的基準は存在しません。


②詐術による欺瞞の問題について

民法第21条は、制限行為能力者が自らの能力の不足を隠し、あたかも完全な行為能力者であるかのように誤認させた場合には、その法律行為を取り消すことができないと規定しています。

• つまり、たとえば制限行為能力者が自らの状態を故意に隠し、相手に対して虚偽の説明を行った結果、契約が締結された場合、相手方はその事実を理由として後から契約の取消を主張できなくなるということです。


③まとめ

1. 審判基準の具体性について

• 法律上、「精神上の障害」や「事理の弁識能力の欠如」は、定量的な基準ではなく、個々の事情に応じた総合的な判断の結果として審判が下されます。

• 後見の場合は「常にその能力を欠いている」状態、保佐や補助の場合は「著しく不十分」な状態が求められ、具体的な判断は専門家の意見や証拠により個別に評価されます。

2. 詐術による欺瞞の規定について

• 制限行為能力者が自らの能力不足を隠して、あたかも完全な行為能力を有していると相手に信じさせた場合、その法律行為は取り消すことができません。

• これは、取引の相手方の信頼保護を目的としており、相手が合理的に信じる状況があれば、制限行為能力者の欺瞞による取引は有効とされます。


このように、民法は個々の事情に応じた柔軟な判断を可能にしつつ、相手方の保護も図るため、明確な数値基準ではなく、実際の生活や医療的評価に基づいた総合的な判断が求められています。



 
 
 

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